もう50年以上前の子ども向け空想特撮シリーズの話で恐縮だが、『ウルトラマン』(TBS)の最終回を今でも覚えている。それだけ強い印象を残す展開だったわけだ。相手が「宇宙恐竜ゼットン」だったと聞けば思い出す人もいよう
▼このゼットンがめっぽう強い。最終回にもかかわらず、ウルトラマンを倒してしまったのである。無敵のヒーローが怪獣に完敗するなど前代未聞。子どもながらその絶望感たるや―。地球もこれで終わり。誰もがそう思ったときに何が起きたか。それまでは脇役に徹していた科学特捜隊が踏ん張りを見せ、力を合わせてゼットンに勝ったのである。頼りになる存在が実はすぐ隣にいたと知って大いにほっとしたのだった
▼このコロナ禍で青息吐息の産業界にあって、建設業もそんな頼りになる存在のようだ。日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測(短観)を見て思ったことである。企業の業況判断が軒並みマイナスとなる中で建設業だけが2桁のプラスを維持していた。先に厚生労働省が公表した5月の有効求人倍率でもこの見方は変わらない。全体は1・02倍(実数)と急落したのに、建設は3・92倍、土木は5・07倍、建設躯体は8・92倍と人手不足が続いている
▼お金は社会の血液。巡らなくなれば存亡の危機に立たされる。生産活動が停滞したコロナ禍の中でも、建設業はほぼ動きを止めなかった。脇役ゆえ目立たなくはあるが、社会を支え続けていたのである。先の見通しは必ずしも明るくはない。ただ、すぐ隣にヒーローがいると分かれば心強さも増す。