人気絵本「ばばばあちゃん」(福音館書店)シリーズをご存じだろうか。持ち前の行動力と知恵で毎日を楽しく過ごす老婦人を描いた子どもたちの大好きなお話である。その数ある作品の一つに「あめふり」があった
▼こんな話である。バケツの水をぶちまけたような雨が降り続き、庭が海になってしまう。怒ったばあちゃんはストーブと暖炉にまきをどんどんくべ、最後にこしょうとトウガラシの束を放り込むのだ。それは煙に乗って空まで運ばれ、雲の上で雨を降らせていたかみなりたちに届く。皆くしゃみは出るわ目は痛いわで大騒ぎ。そんなこんなで雲はちぎれ、かみなりたちは地上の泥水に転落。空にすっきりとした青空が広がるのである
▼こんなばあちゃんが今いてくれたらどんなに助かることか。ここしばらく日本でも九州をはじめ広い範囲で強い雨が降り続き、深刻な被害が相次いでいる。西日本から東日本にかけて梅雨前線が停滞しているため、かみなりたちが好き放題に暴れ回っているらしい。熊本県南部に4日未明発生した線状降水帯はその後も場所を変え時を変え、連日、日本のどこかを襲っている。九州では熊本を中心に50人以上が死亡し、少なくとも13人が行方不明のままだ。きのうは長野と岐阜の両県にも大雨特別警報が出た
▼前線の活発化はしばらく続く。当面は日本のほぼ全域で土砂災害や河川の氾濫に厳重な警戒が必要だ。間違っても常人ならぬばばばあちゃんを見習って、逃げずに立ち向かおうなどと考えてはいけない。少しでも危険を感じたら安全な場所に避難しよう。