話題になっていた事件の裁判結果を聞いて、市民感覚とはどこかずれている判決だなと思うことがたまにある。大阪府警が裁判所の令状を取らず、窃盗事件の捜査対象車両にGPS端末を取り付けた2013年の事案もそうだった
▼証拠固めをするためには必要で、全く問題ない手法だと思った人が当時多かったのでないか。ところが最高裁は17年3月、これを違法と判断したのだ。理由はプライバシーの侵害である。なるほど分からない話ではない。ただ、こんなところでプライバシーかと感じたのも事実。それを思い出したのは最近、やはりGPSに絡む最高裁判決があったからである。ストーカーが相手の車にGPSを取り付け、所在地を把握する行為は違法に当たらないとの判断を先週示したのだ
▼警察が令状を取らずに窃盗事件の捜査対象車両にGPSを付けるのは違法で、ストーカーが無断で相手の車にGPSを取り付けるのは違法でないらしい。はて、ストーカー被害者のプライバシーは一体どこへ。根拠は「見張り」を禁じたストーカー規制法にあるという。見張りとは被害者の近くでするものだから、GPSで位置情報を得るのは見張りにならないと判断したそうだ。率直に言わせてもらえば、さっぱりわけが分からない
▼相手の居場所を常に把握する行為を見張りでなくて何と言おう。ストーカーの執念深さを甘く見てはいけない。時代に合わない法律なら改正が必要でないか。「新しき酒は新しき革袋に盛れ」だ。法が現状に後れを取り、笑うのはいつも悪いやつばかりというのでは困る。