去年出版されて大いに話題となった新書に『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治、新潮新書)がある。立命館大産業社会学部教授で医療少年院勤務の経験も持つ著者が今まで見過ごされてきた非行少年の背景に迫った力作だ
▼それを象徴的に示す事実が本のタイトルである。宮口氏はA4の用紙に丸を描き、「これをケーキだとして3等分に切り分けて」と問題を出す。簡単なことだがこれができないらしい。最初に真ん中から切って2等分にしてみたり、端から大きさバラバラで少しずつ切ってみたり。なぜこうなるかというと計画を立てる力がないためだそう。その例と比べるのは失礼かもしれないが、こちらの方たちもケーキを切るのがあまり上手でないようだ
▼立憲民主党と国民民主党がそれぞれ解党した上で合流し、新党を立ち上げようとしているのはご存じの通り。ところが一向に話はまとまらない。立憲の枝野幸男代表がこの新党の名称を、「立憲民主党」にすると言って譲らないのである。現党名をケーキだとした場合、枝野代表が上下二つに切り分けて上のデコレーション部分を自分に、下のスポンジ部分を国民民主党にあげるようなものでないか。話がまとまらないのは当たり前である。子どもなら取っ組み合いのけんかになってもおかしくない
▼もともと安全保障や消費税減税、憲法改正といった基本政策にも違いがある。それに加えてケーキのおいしい部分だけもらいたい人がいるのでは合流協議の進展は難しかろう。さて「ケーキの切れない政治家たち」はどうするつもりか。