創業は1889(明治22)年にさかのぼるというからなかなかの老舗である。玩具やコンピューターゲームの製造・販売を手掛ける任天堂のことだ。このところ業績が絶好調らしい
▼6日発表したことし4―6月期の連結決算は、営業利益が前年同期比5・3倍の1447億円に達したという。4―6月期としては過去最高だそうだ。新型コロナウイルス感染拡大で苦境に陥る企業も多い中、うらやましい話でないか。絶好調の理由はまさにその新型コロナにあるようだ。いわゆる〝巣ごもり消費〟で家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」が飛ぶように売れているのである。品薄状態は今も続き、抽選で当たるくらいしか買う手立てはないらしい
▼なぜそんなに人気なのか。皆の狙いはゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」(あつ森)をプレイすることにある。自分のアバター(分身)を作り、気に入った無人島を住みやすいように改良したり、動物たちと交流したりしながらのんびり暮らすゲームである。どこで珍しい魚や昆虫を捕まえられるか住民と情報交換し、タヌキが経営する商店で新しい道具を手に入れる。ときには海岸で昼寝をしたりして。もちろん撃ち合いや戦闘、カーチェイスはなしだ。実にのんびりした世界である
▼あつ森ファンに聞くと、もう一つの自分の生活がそこにできていくようなのだとか。外に目を向ければ世間はコロナ一色。マスクをしろだの自覚が足りないだのギスギスしていて窮屈極まりない。現実逃避を助けてくれる任天堂の好業績はまだしばらく続きそうである。