シューパロ湖底の街

2020年09月09日 09時00分

 当時はこの駅前商店街にたくさんの人が訪れ、大いににぎわっていたのだろう。あの神社のお祭りの日は地域全体が熱気に包まれたに違いない―。そんな情景を思い浮かべながら、今はわずかな痕跡の他には何もない土地を歩かせてもらった

 ▼先の日曜日に開かれた、渇水期の夕張シューパロダム湖底を散策するイベントでのことである。なかなかできない経験だ。ここにはかつて人口2万人の街があったのだという。旧鹿島地区は三菱大夕張炭鉱のいわば城下町で、夕張川沿いに市街地が広がっていた。閉山とともに人口流出が始まり、シューパロダムの建設によって完全に水没。ただ、夏場の渇水期には地区の大部分が姿を現すのである

 ▼今回の催しを企画したのは夕張商工会議所(会頭・中島功治北宝建設社長)など地元経済界有志でつくる「沈んだ街あるき実行委員会」。毎年限られた時期だけ見ることのできる昔の街を地域活性化に役立てられないかと考え、関係機関と調整し初開催にこぎ着けたそうだ。栄町商店街、三吉神社、明石駅、夕張東高校、拓銀鹿島支所―。それらがあった場所55カ所には写真付きの看板が置かれ、往時の街を想像することができた。鉄橋や駅のホームなど形を残しているものもある。そこを歩いて見て回れるのだから面白くないわけがない

 ▼当日は大盛況で山奥に思いがけぬ大渋滞が発生。現地に着くまでだいぶ待たねばならなかった。1500人以上が押し掛けたらしい。眠っていた地域観光資源の掘り起こしに成功したということだろう。沈んでいた、というべきか。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 古垣建設
  • 日本仮設
  • 川崎建設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,454)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,289)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,177)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,106)
函館開建が国道5号の常盤川交差部に橋梁新設の可能性...
2024年04月17日 (783)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。