自己免疫疾患と総称される病気の一群がある。よく知られているのは慢性関節リウマチだろう。本来なら自分の体を守るため細菌やウイルスなど外敵と戦うはずの免疫に異常が生じ、正常な自己組織を攻撃しはじめる病態である
▼当方の母もリウマチで、手指が拘縮してほとんど自由に動かせなくなっていた。日常生活を送る上での苦労は並大抵でない。特効薬もないという。上手に付き合っていくしかないのである。コロナ禍にあえぐ今の世の中を見ていて、その自己免疫疾患を思い出した。新型コロナ患者からも免疫異常の症例が報告されているが、この場合はそちらでなく現在の社会の様相の方。近頃、感染拡大を防ごうとして打たれた対策で、経済や生活が破壊される例が増えているように感じるのである
▼帝国データバンクによると、全国で514件(10日現在)の新型コロナ関連倒産が判明しているそうだ。客が激減した飲食店やホテル・旅館業が多い。人知れず廃業したところもまだあるに違いない。住む場所を失う人も増えているという。収入が減り、家賃やローンが払えなくなるのである。9日のNHK『クローズアップ現代+』が伝えていた。さらなる懸念は警察庁が発表した8月の自殺者数だ。去年より246人増えた
▼諸悪の根源がウイルスなのは間違いない。ただ、ゼロリスクを求めるあまり、本来は社会を守るはずの施策が人々を攻撃しているなら厄介な話だ。ウイルスの実像もだいぶ分かってきた。やはり特効薬はないが、社会が動けなくなる前に上手な付き合い方を見つけたい。