今はあまり話題に上らなくなったが、1970年代には未確認飛行物体(UFO)が大流行していた。テレビや雑誌が頻繁に取り上げていたのを覚えている人もいよう。当時は〝未確認飛行物体〟でなく〝空飛ぶ円盤〟と呼ぶのが通例だった
▼71年放映の特撮ヒーロードラマ『宇宙猿人ゴリ』(フジテレビ)も毎回、地球を侵略しに来たゴリの乗る円盤が突然現れるシーンから始まった。それだけ人気があったわけだ。かつてほどの盛り上がりはないとはいえ、現在でも夜空に浮かぶ謎の光体や、青空を背景に不思議な動きをする物体があればそれなりに騒ぎになる。最近も6月に東北上空で白い飛行物体が目撃され、大きく報道されたばかりだ
▼地球を侵略しに来たのではなくとも、安全のためとりあえず正体くらいは突き止めておきたいもの。そんな必要に迫られてのことだろう。河野太郎防衛相がおととい、自衛隊の航空機などがUFOに遭遇した際、写真撮影や情報分析を実施するよう指示を出したという。米国防総省も先月、UFOを調査する特別チームの立ち上げを発表していた。日米ともドローンの普及が背景にあるようだ。航空機の運航に支障が出たり、敵国や反社会勢力が情報収集や妨害活動に利用したりするのを防ぐのが狙いらしい
▼即物的な話で面白みもないが安全保障を考えれば当然の措置に違いない。確かに近頃、政府機関や飛行場にドローンが侵入する例は増えている。さらに高性能化が進むと宇宙猿人並みの脅威にならないとも限らない。UFOも素直には楽しめない時代である。