自らの生活に役立てたいとの願いと、見ず知らずの人の生活をこっそり盗み見るような後ろめたさとが混じって妙に気になるのが新聞やラジオの人生相談コーナーだろう。親子や夫婦、兄弟のもめ事からご近所付き合い、仕事の悩みまで。深刻な相談が日々寄せられ、弁護士や学者、作家といった識者が親身になって助言をする。筋論に終始するより、相談者の目線に立って考え、導かれた回答の方が心に響くようだ。そんな人生相談の一つ、読売新聞の「人生案内」を毎日愛読しているのがきのう、第99代総理大臣に就任した菅義偉氏である。好きが高じて今では雑誌『プレジデント』(プレジデント社)に、「菅義偉の戦略的人生相談」という連載を持っているほどだ
▼秋田県湯沢村のイチゴ農家に生まれ、高校卒業後、家を飛び出すように上京。工場に勤めたが希望を見い出せず、一念発起して働きながら法政大に通った人である。いろいろな現実に触れられる「人生案内」は自分の励みにもなったのだろう。菅氏は安倍政治の継承を第一に掲げながら、持論である縦割りや既得権益、あしき前例主義の打破にも意気込みを見せる。ただ当面はコロナ禍で疲弊した社会の立て直しと、経済の再生に取り組む必要があろう
▼以前、プレジデントのインタビューで「人生案内」はまず相談を読み、自分なりに答えを出した後で回答を読むと語っていた。いつしかそれがほぼ一致するようになったという。きょうからは日本の諸課題を解決に導く最前線に立つ。こちらも国民の願いと一致した答えを出せるといい。