核兵器禁止条約

2020年10月29日 09時00分

 ことし5月、白人警官が黒人男性を確保しようとして死亡させた事件を発端に、全米を巻き込む抗議運動が起こった。運動の象徴となったのが、抗議者らがワシントン州シアトル市の一部を占拠してつくったキャピトルヒル自治区である

 ▼市内にいわば無法地帯ができたわけだが、当初、民主党のジェニー・ダーカン市長は抗議に共鳴し、「お祭り」だ「愛の夏」だと言って自治区を黙認。警察に手を出させなかった。それなのに、である。3週間後、住所を公表していない市長の自宅に抗議運動参加者が多数押し寄せた。騒ぎを起こし、身勝手な要求を突き付けたのだ。市長は態度を変え、数日後、警察に自治区解体を命じたという。理想の社会を夢見るだけでは現実を動かせないのである

 ▼開発や保有、使用など核兵器に関わる一切を網羅的に禁止し、平和な世界を目指す「核兵器禁止条約」に異様なこだわりを持つ人にも市長と似たものを感じる。先週、批准国・地域が50に達し、来年1月の発効が決まった。意義のある条約だ。ただ、日本は参加を見送った。内外から批判の声も上がったが、的外れだろう。日本に核兵器の照準を合わせる国が近隣にある中で、抑止力を自ら捨てる選択はできない

 ▼日本は唯一の被爆国として他のどの国より核兵器なき世界を願っている。現実的に段階を踏んで減らしていく核拡散防止条約を批准しているのもそのためだ。いくら理想を叫んでも、ならず者は聞く耳を持たない。核廃絶を願う者同士けんかをすることはないのだ。それぞれの国ができることをすればいい。


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