平成の初めころ、細野晴臣、忌野清志郎、坂本冬美の3人でつくった「HIS」という音楽ユニットがあった。アルバムも風変わりな歌が多く、当時は面白がってよく聞いていたものである
▼中でも異色だったのが「渡り鳥」。「渡り鳥カモカモ 渡り鳥カモカモ カモカモしれない ワシではないだろう カモカモしれない ガンカモ科のカモか コガモもいるぞ 孫ガモひまご Oh」。冒頭からこの調子である。歌の後半にはガンやシギ、ツルの名前も出てくる。いずれも渡り鳥としては代表的な種類だろう。日本では古くから親しまれ、その愛らしい姿や鳴き声が多くの人の心を和ませてきた
▼ただ、必ずしも良いことばかりではない。鳥インフルエンザを運んでくることがあるのだ。今回もそれが起こったらしい。香川県三豊市の養鶏場でニワトリが大量死し、県で調べたところ、「H5型」ウイルスが検出されたという。県はきのう対策本部会議を開き、飼育されている33万羽の殺処分を始めたそうだ。国内の養鶏場での鳥インフル確認は2018年1月のさぬき市以来である。被害を受けた養鶏業者は断腸の思いに違いない。ただでさえ新型コロナで打ちのめされているのに、別のウイルスで大事なニワトリまで奪われるとは
▼日本で冬を越す鳥の渡りの季節に入り、鳥インフルへの警戒感は高まっていた。先月には紋別市で採取された野鳥のふんから、やはり「H5型」ウイルスが検出されている。歌は「シベリアの厳しい環境 来年もまた来ておくれ」と続くが、ウイルスは運ばないでおくれ。