エジプトのピラミッドはなぜあれほど抜きん出て大きいのか。古今東西の個性あふれる建築物を訪ね歩く建築探偵としても名高い藤森照信東大名誉教授はこう見る
▼「ピラミッドが大地の風景を越えた時、大地の上を流れる時間も越えたように見る人には伝わる」。そう演出することで、「ファラオは、大地を造り時間を支配する神の絶対性を自分も手に入れようとしたのでは」(『フジモリ式建築入門』筑摩書房)。そんなピラミッドの起源とされているのが紀元前2600年頃に造られたサッカラの階段状ピラミッドである。王と神が同格とみなされ、霊魂の不滅と復活を基盤とする宗教が浸透していた時代の産物だ
▼この階段状ピラミッドを中心とするサッカラ遺跡でことし最大の発見があったという。2500年以上前の木棺100基あまりとミイラ、副葬品などが保存状態の良いまま発掘されたのである。エジプト政府が14日、発表した。発掘は途中というからこの先もどんなすごい宝物が出てくるやら。ニュース映像を見ると、本当に古代の遺物なのかと目を疑うくらい色鮮やかで美しい。細かな装飾や細工も往時の姿そのままのようだ。卓越した技術には感心するほかない。さすがに測量や設計から施工計画、材料加工までの一貫した建築体系を編み出し、時代を超えるピラミッドを造った古代エジプト人である
▼それはそうと今回、唯一公開されたミイラの40代男性も魂があればさぞ驚いたろう。復活ではなかったものの、久しぶりに起こされたと思ったら多くの人の注目を浴びていたのだから。