ICT施工で省力化 微調整は人の目と手で慎重に
波と砂の浸入を防いでより使いやすく安全な港に―。釧路開建は11月29日、2009年度から釧路港西港区に整備を進めてきた新西防波堤で最後となる本体ケーソン据え付けの様子を公開した。周囲の被覆や水中コンクリート工事などは年度内に完了。21年度以降は複数年かけて海面から4・1―4・5㍍の天端高を確保できるように上部コンクリートを打設し、全体を完成させる。
新西防波堤は、国際バルク戦略港湾として整備を進めた釧路港国際物流ターミナルがある第2埠頭や、ガントリークレーンが設置されている第3埠頭などを抱える西港区の静穏度向上と漂砂の浸入を防ぐことが目的。港湾計画には盛り込まれているが事業化のめどが立っていない第5埠頭地区の最も西側に位置する西防波堤を先行整備している。
整備延長は1800㍍。静穏度対策に最も効果的な先端側から09年度に着工した。その後は阿寒川河口から海岸沿いに流れてくる漂砂をブロックするため基部側からも整備を開始。20年度は約27億円を投じ、中間部分の330㍍、ケーソン15函の製作や据え付けを進めてきた。
最後の1函となるケーソンは長さ21・3㍍、幅11・6㍍、高さ8㍍。西港区内のフローティングドックで製作し、南防波堤内側で保管していた。
この据え付けを含む新西防波堤E部建設を受注したのは浜谷建設・山田組・葵建設共同体。早朝からえい航し、内部に水を注入して浮力を調節しながら起重機船のウインチで慎重にケーソンを所定の位置まで動かした。
この現場ではGNSSによる作業船位置誘導管理システム、自動追尾システムによる水中基礎捨て石ならし工法などICT施工を採用し、工期短縮や省力化を実現。
しかし、前後の余裕が70㌢ずつしかない中にケーソンをはめ込まなければならず、ちょっとでも波で揺れたり傾いたりするとぶつかって破損する恐れがあるため、この日ばかりは約25人がかりで人の目と手で微調整しながらの作業となった。(釧路)
(北海道建設新聞2020年12月1日付1面より)