若いころ、シンガーソングライター浜田省吾さんのアルバム『Sand Castle』(サンド・キャッスル)をよく聴いていた。独特な声と叙情的な歌に、一人で胸を震わせていたものである
▼名曲ぞろいの中で、特に気に入っていたのが「丘の上の愛」。主人公の女性は貧しさを嫌い、愛と引き換えに丘の上の金持ちとの安定した生活を手に入れたのだが、なぜか出るのは涙とため息ばかり。何かが違ったのだ。ところがそんな息の詰まる日々の中で彼女はある男性と出会う。聞かせどころだろう。どんな人物だったのか。こんな一節で明かされる。「君がただひとり 心を奪われた あいつはまだ若く 夢の他には何も 持たない貧しい学生」
▼秋篠宮皇嗣殿下の長女眞子内親王殿下の、婚約者小室圭氏に寄せる愛を先頃発表された文書であらためて知り、久々に先の歌を思い出した。こう言っては何だが小室氏は今のところ、弁護士資格を取得するため米国で学ぶ「夢の他には何も持たない」学生である。もちろんそこが魅力なのだ。漫画家の柴門ふみさんもエッセーに、好きになるときの男女の違いを「女は男の夢に弱い。夢を語る男に、ぽおっとなってしまう」と記していた。支えたいと思うのかもしれない
▼気が気でないのは親である。ただ、あれだけ結婚に反対していた秋篠宮さまもついに折れ、最近の記者会見では二人の気持ちを尊重すると語っていた。とはいえ眞子さまは皇嗣の長女として責任ある立場。小室さんはまず身辺をきれいにし、持つのが夢だけでないと証明する必要があろう。