気象庁が特定の条件を満たした台風に名称を付けているのはご存じだろう。「顕著な被害が発生し、かつ後世への伝承の観点から特に名称を定める必要があると認められる」場合である
▼最も古いのは1954年の洞爺丸台風で、伊勢湾台風や室戸台風などよく聞く名称が並ぶ。現在、名称が付けられているのは10個。ところで最新の2個はことし付けられたのだが、それを知っている人は意外と少ないかもしれない。千葉県を中心に甚大な被害をもたらした去年9月の「令和元年房総半島台風」(15号)と福島、宮城両県で多数の死者を出した10月の「令和元年東日本台風」(19号)である。名称が付けられたのは1977年の沖永良部台風以来。実に42年ぶりというから、それだけ近年まれに見る顕著な被害だったわけだ
▼菅首相は1日の閣僚懇談会で、仮称「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」をまとめるよう閣僚に指示した。先の台風2個のような自然災害の激甚化に対応するためである。近年ほぼ毎年、風水害や巨大地震に襲われる事実を考えると、優先順位の高い政策課題であることは間違いない。計画は21―25年度で事業費15兆円。インフラ整備では予防保全や老朽化対策、デジタル化に力を注ぐらしい
▼幸いことしは巨大台風や地震がなかったが、もしこのコロナ禍で起こっていたらと考えると寒気がする。これで対策に感染症という難しい前提が加わった。ただ、解決策はある。台風や地震が来ても被害を最小限に抑える手立てを講じることだ。計画の足を止めてはいけない。