はやぶさ2帰還

2020年12月08日 09時00分

 米国の神話学者ジョーゼフ・キャンベルは、洋の東西を問わず世界の神話には幾つかの共通したパターンがあることを明らかにした。例えば英雄神話なら〈冒険の旅に出て、多くの試練を乗り越え、宝物を見つけて家に帰ってくる〉といった形式をとる

 ▼紀元前に書かれた古代メソポタミアの「ギルガメッシュ叙事詩」から、中世日本の昔話「桃太郎」、現代アニメ「宇宙戦艦ヤマト」まで同じ構造を持つ物語は多い。英雄と認められるにはそれだけ厳しい条件が必要ということだろう。だとすれば、このケースも英雄神話に加えて差し支えあるまい。2014年に小惑星「リュウグウ」へ向け出発し、数々の難しいミッションをこなし、リュウグウの地下物質を持ち帰った小惑星探査機「はやぶさ2」である

 ▼宇宙航空研究開発機構(JAXA)が6日、豪州南部ウーメラの砂漠地帯で物質の入ったカプセルを回収した。完全な状態だったという。宇宙や生命の謎を解く鍵になるかもしれない、まさに宝物である。物質だけではない。はやぶさ2の運用成功自体が素晴らしい財産だ。地球から約3億㌔離れた直径900mの小惑星に到達し、7m四方の目標範囲にぴたりと着陸。ロボットを遠隔操作し、地下物質を採取して帰還した。どれも世界初である

 ▼これが昔ながらの英雄物語と違うのは、多くの大学や研究者、中小企業、関係機関も参加したチームで成し遂げた偉業だということだ。多くの人々の応援も力になったろう。カプセル投下後、はやぶさ2はまた次の小惑星へ向け出発した。冒険の旅は続く。


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