新型コロナウイルス感染拡大防止に最も大切な対策は「3密」の回避だが、いつも二つまではすぐ思い出すのにもう一つが出てこない。「密集と密接と…、えーと、もう一つは何だったっけ?」。そんな体たらくである
▼「密室じゃないし密告でもない。壇蜜というのはあり得ない」。そんなくだらないことまで考えたところで、やっと「密閉」が記憶の底からよみがえる。「密」だけは頭にこびりついているのだが。その年の世相を反映する漢字一文字を選ぶ日本漢字能力検定協会の「今年の漢字」に、その〝密〟が選ばれた。やはり皆、ことし1年間はこれが頭から離れなかったとみえる。応募総数20万8025票のうち2万8401票(13.7%)を集め1位になったという
▼2位が〝禍〟、3位が〝病〟と続き、さらに4位以下も〝新、変、家、滅、菌、鬼、疫〟と10位までほぼコロナがらみ。〝鬼〟と〝滅〟は漫画『鬼滅の刃』の流行からだろうが、鬼退治をコロナとダブらせた人も多かったに違いない。感染拡大がなく、東京五輪・パラリンピックが予定通り開催されていれば、たぶん〝華〟や〝輝〟、〝金〟といった明るい字が並んでいたのでないか。突然の首相交代という大きな出来事もあったのにコロナの前ではかすんでしまった。しかもいまだに事態は終息の気配がない
▼「漠然と恐怖の彼方にあるものを或いは素直に未来とも言ふ」近藤芳美。未来とは、誰もが笑顔になれる希望である。来年こそはコロナを克服して恐怖の時を脱し、皆で手を取って喜び合える字が選ばれてほしいものだ。