北国の住人にとって雪はなじみ深いものだが、時に受け入れねばならない忍耐を思い出させるものでもある。余市出身の詩人左川ちかもそれが身に染みて分かっていたに違いない。「冬の肖像」という作品を残している
▼中段から一節を引く。「どんなに踏み分けて進んでも奥の方がわからない程降ってゐるので、そばを通る人も近くの山も消え去ってしまふ雪の日である」。こうなると外に出るのは諦めるほかない。ただ、家に閉じこもってはいられない場合もある。例えば降り続く雪で家がつぶれそうになったときだ。どうやらそんな状況だったらしい。おととい、岩見沢市栄町の住宅の敷地内で、80代の男性と50代の女性の親子が雪に埋まっているのが見つかった。2人とも亡くなったという
▼屋根から落ちてくる雪で1階の窓が割れるのを防ぐため、板を張り付ける作業をしていたそうだ。思いもしない速さで増える雪に慌て、頭上の脅威を忘れてしまったのでないか。そこに屋根から大量の雪が落ちてきた。岩見沢は連日の大雪で、きのう正午現在の積雪は118cm。平年比2・7倍というから驚く。筆者も岩見沢出身のため、以前は毎年冬になると実家の除雪に行っていた。やはり放っておくと窓が全面雪で埋まってしまうのである
▼岩見沢はもともと豪雪地域だから皆慣れてはいるが、高齢化が進み、毎日の雪かきもままならない家が多くなっているのも現実だ。今回の悲劇もそれと無縁ではあるまい。行政や町内の助け合いが必要なのはもちろんだが、無理をせず自分の身を守ることも大事である。