応援募りまちづくり CF型ふるさと納税、道内でも

2021年01月04日 10時00分

CFで1億円以上集めて改修が実現した春国岱の木道

 地方自治体が、特定プロジェクトを実施するため共感者から出資を募る「クラウドファンディング(CF)型のふるさと納税」が道内でも広まっている。各自治体のプロジェクトはソフト事業が多いが、現在募集中のものでは白糠町の札幌遠友夜学校記念館建設募金などハード整備につながる事業も目に付く。過去には根室市が春国岱(しゅんくにたい)保全で1億円以上集めた成功例もあり、人口減少などを背景に自治体財政が逼迫(ひっぱく)する中で建設事業を推進するための新たな資金調達手法になるか注目される。

(建設・行政部 佐々木潤、帯広支社 太田優駿、空知支社 荒井園子、留萌支局 梅坪国史郎、室蘭支局 高橋秀一朗記者)

 CF型のふるさと納税は、特定のプロジェクトの実施に当たり、その目的に共感する者から資金を集めるもの。通常のふるさと納税に比べて、より使途が明確な点が特長で、インターネットを介することで幅広い人々に募集できる強みもある。

 名称は仲介する民間事業者によって異なり、ふるさとチョイスを運営するトラストバンクは「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」、さとふるは「さとふるクラウドファンディング」と称している。

■道内でも建設事業への活用

 全国的に活用が増える中、道内の事例を見ると、道が新型コロナウイルス感染症から地域医療を守るために実施した「エールを北の医療へ!」は開始わずか2日で目標金額の5000万円に到達。当初の募集期間後も寄付金が集まり、今月22日現在で11億円以上に積み上がっている。

 ハード整備を伴うプロジェクトでは、根室市が2018年にラムサール条約登録湿地・春国岱の保全でCFを実施。度重なる自然災害で大きな被害を受けた自然散策路を修復するもので、6000人以上から賛同を受けて目標額に達した。

 現在、募集中のものでは、十勝管内の音更町がNHK連続テレビ小説「なつぞら」のロケセット整備を計画。建設中の道の駅敷地内に母屋や牛舎、菓子店などを再現して誘客を図る考えで、21年2月28日までに5000万円を目指す。

 釧路管内の白糠町は、新渡戸稲造が勤労青少年のために造った札幌遠友夜学校の功績をたたえて、札幌の一般社団法人が計画する記念館建設事業に協力するため寄付を募っている。期限は21年2月28日で、3000万円を目標にしている。

 胆振管内の洞爺湖町は、財田地区で湖畔の遊歩道にある展望デッキ修復にCFを活用しようと300万円を目標に設定。留萌管内の羽幌町は2件のCFを実施していて、「道北観光応援プロジェクト」では、新型コロナウイルスで打撃を受けた観光を再興しようと、道の駅修繕や温泉宿泊施設の経営支援で200万円募集している。

■まちづくりの有効な手段に

 総務省のまとめでは、19年度にCF型ふるさと納税を行った自治体は全国で214団体あり、前年度よりも10団体増加した。

 同省の担当者は、新型コロナウイルス感染症での医療支援や焼失した沖縄県の首里城再建など最近の事例を挙げ、社会情勢を反映したプロジェクトほど多くの寄付金を集めていると傾向を説明。中には目標額に達しない事業もあるが、それも一概に失敗とは言えず「一般財源で予定していた事業が、クラウドファンディングで少しでも自治体負担が緩和できれば成功と言えるのでは」と考えを述べた。より身近になった〝寄付〟という行為を通じて「(自分の)まちを思ってくれる人がたくさんいることが分かるだけでも大きな価値だ」とも話す。

 厳しい財政状況にある道内市町村が引き続き公共事業を含むまちづくりを推進していくために、CF型ふるさと納税は有効な手段。一部の町からは「予定する整備の財源に使えたら」「何らかの事業で活用したい」といった声も挙がり、今後もさらなる拡大が見込まれる。

(北海道建設新聞2020年12月28日付1面より)


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