全日本交通安全協会などが主催する「交通安全ファミリー作文コンクール」の2019年度優秀作品集を読み、あらためて交通事故の残酷さや悲しみに触れた
▼上三川町立明治小5年(当時)の山田怜生君は、大好きな剣道の先生を突然失ったという。先生の車がトラックと衝突したのだ。山田君は記す。「辛くて胸が苦しくなった。ぼくがこんなに苦しいのだから、先生の家族や親せきはどんなに辛いことだろう」。4日にも東京都渋谷区でタクシーが横断中の歩行者を次々とはね、49歳の女性が亡くなる事故があった。家族の苦しみはいかばかりか。別れは人の世の常とはいえ、そんな理不尽な出来事を素直に受け入れられる人はどこにもいまい。死亡交通事故を少しでもなくしたいというのは多くの人の共通の願いだろう
▼その願いがこんな形でかなえられるとは思いもしなかったが、突然の不幸に見舞われる人が減ったことは朗報といっていい。20年の全国交通事故死者数が前の年を大幅に下回ったそうだ。警察庁が4日発表した。それによると前年比376人(11.7%減)の2839人にとどまっている。統計を遡ることができる戦後すぐの48年以降、3000人を切ったのは初めてのことなのだとか。47都道府県のうち、実に36道府県で減少。本道も8人減の144人だった
▼コロナ禍で多くの人が外出を控えたためとみられているが、これだけ世間を騒がせたのだからそれくらいの土産は置いていってよかろう。あとはこれ以上悪さをせず、一刻も早く立ち去ってくれるとさらにうれしいのだが。