落語の「饅頭怖い」はよくご存じだろう。仲間が集まり何が一番怖いかを話し合っているとき、普段は兄貴風を吹かせている松が言いにくそうに「実は饅頭が怖い」と打ち明ける噺である
▼みんな面白がっていろいろなまんじゅうの名前を次々と上げ、松をからかう。そのうち松は気持ちが悪くなってきたからと横になってしまうのだが、みんな悪乗りして本物を枕の横に積み上げた。松はそれをうまそうに平らげる。だまされたと気付いた時にはもう遅い。いいように遊ばれ、利用されていたのである。その松といささかダブって見えるのが最近の文在寅韓国大統領だ。18日の新年記者会見での様子が日本に対するいつもの強硬姿勢とはだいぶ違っていた
▼元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟の判決に従い日本企業の資産を強制執行で現金化するのは「韓日関係にとって望ましくない」と発言。さらに元慰安婦に対し日本政府に損害賠償を命じた8日の判決についても「正直困惑している」と語ったのである。額面通り受け取りたいが、「饅頭怖い」のようで警戒心が先に立つ。これまで元徴用工訴訟については「司法を尊重」と知らぬふりをし、慰安婦問題では2015年の日韓合意をないがしろにしてきたのが文大統領である。問題は自国の司法にあるのに、「韓日で解決策を模索したい」と言うことからしておかしい
▼先の落語で松は本当に怖い物は何かと問われこう答えた。「それなら熱くて渋い茶が一杯怖い」。文大統領も何か自分の得になることを狙っていると思われても仕方ないのでないか。