一獲千金の話を見つけると、悪知恵を働かせて金もうけにまい進するのが「両さん」こと両津勘吉巡査長の特徴である。秋本治さんのギャグ漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(集英社)の主人公なのはご存じの通り
▼「アニメ現代事情の巻」では人気アニメの原画セルが高値で売れることに目を付けた。すぐに知り合いのアニメ制作会社へ行き、若手のアニメーターに偽の原画を描いてくれと頼み込むのである。こういった分野ではプロ並みの技術を持つ両さんだ。専用の機械で原画から数十枚のセルを作り、自分で彩色までしてアニメフェア会場に持ち込み売りさばこうとする。大阪府の画商が日本画の巨匠の偽版画を大量に販売していたとの報を聞き、その一編を思い出した
▼明るみに出た偽版画は平山郁夫や東山魁夷、片岡球子ら一般にもよく名の知られた画家の作品ばかり。人気が高く引き合いも多いことに目を付けた画商が、ひともうけしようと知り合いの奈良の工房に頼んで作らせていたらしい。既に警視庁が捜査を始めている。工房は8年前から約800枚の偽版画を刷ったと話しているそうだ。本物なら1枚数十万から数百万円で取引されるというから画商もずいぶんと荒稼ぎをしたものである。素人に真偽の見極めは難しかろう
▼ところで先の漫画で両さんの偽セル画は、知識豊富で目も肥えた子どもたちにたやすく見破られてしまう。今回の偽版画も流通量が多過ぎることに関係者が気付き、調べてみると色合いやサインにわずかな違いがあったという。やはり目利きはごまかせない。