戦国時代に中国地方統一を成し遂げた武将、毛利元就は希代の策士だった。戦国三大奇襲の一つ「厳島の戦い」(1555年)はその真骨頂とされ、後の武将たちの手本にもなったという
▼ひと言で表現すると情報操作である。この時の戦力差は元就軍4千に対し敵の陶晴賢軍が2万。正面から戦っても勝ち目はない。元就はまず陶の重臣が謀反を企てているとのうわさを流し、敵勢力内部に亀裂が入るよう仕向けた。さらに、急所の厳島を陶軍に攻められると毛利は壊滅だとの偽の情報を広め、大軍には不利な狭い土地におびき出した上で周囲から猛攻撃を加えたのだ。自軍を有利に導くにはうそも謀略も辞さない。元就の強さはそこにあったのである
▼小池百合子東京都知事も元就を手本にしたのかもしれない。政府は5日、1都3県の緊急事態宣言延長を決めたが、その検討が進んでいるさなか、小池知事が決定を確実にするため、千葉、埼玉、神奈川の各県知事にだまし討ちを仕掛けていたというのである。黒岩祐治神奈川県知事によると経緯はこうだ。共同で延長要望を出したい小池氏が慎重な黒岩氏を千葉も埼玉も賛成しているからと説得。ところが黒岩氏が両知事に直接確認するとそんな事実はない。しかも二人も他の知事は賛成だと吹き込まれていたのである
▼主導権を握り自分の考えを通すため小池氏がうそをついたのだろう。思い返せば小池氏は以前も、豊洲市場移転や五輪会場整備で怪しげな情報を流布して事態を混乱させていた。自軍に亀裂を入れるのがお得意とはあきれた策士である。