小松左京といえば巨大災害に警鐘を鳴らしたSF小説『日本沈没』がよく知られているが、ショートショートにも味のある作品が多い。「さらば、貧乏神」もその一つだ。こんな内容である
▼ある夫婦が不幸に襲われ続けていた。子どもは病気をする、仕事はうまくいかない、株や土地を買っては損をする、ボーナスは電車ですられる…。その原因は貧乏神。引っ越してきた家にあったつぼに住み着いていたのだった。出会ってしまったが最後、何もかもうまくいかなくなり、没落の一途をたどらされる運命である。その伝でいくと、健康を害し仕事を奪う新型コロナウイルスも貧乏神と呼んで差し支えあるまい。今度は地価にその影響力を及ぼしてきた
▼国土交通省がおととい発表した2021年1月1日時点の公示地価で、住宅地や商業地など全用途の全国平均が0.5%下落したそうだ。6年ぶりのマイナスだという。リーマンショック由来の地価低迷からアベノミクスで立ち直って以来の急ブレーキである。東京や大阪といった首都圏では繁華街でも空き店舗が目立つという。リモートワークの増加でオフィス需要も低下していると聞く。地価は景気の遅行指標のため多くの人は「やっぱりか」と諦めの心境でないか
▼一方、本道は商業地、住宅地共にプラス。地方では景気より地域事情に大きな影響を受けるためで、堅調なニセコや北広島の新球場が歯止めとなった。ただコロナ禍が長引けば下落は避けられまい。先の話の貧乏神は勘違いで自ら消滅するが、今のウイルスにそれは期待できそうもない。