日本にも超高層ビルは数多くあるが、最も高いのは2014年に竣工した「あべのハルカス」である。近畿日本鉄道が大阪市阿倍野区に建設した、高さ300mの複合商業ビルだ。大阪へ行った際、空に伸び上がる姿に目を見張った人も多いのでないか
▼規模はS・SRC造、地下5地上60階、延べ30万6000m²。23年に高さ330mの虎ノ門・麻布台プロジェクトA街区が完成するまでは1位の座を維持する。この日本一のあべのハルカスより100m高い超高層ビルが横倒しになり、航路をふさいだようなものだろう。今治市の正栄汽船所有の大型コンテナ船「エバー・ギブン」(全長400m)がスエズ運河で座礁していた事故の話である
▼砂嵐による視界不良と強風の影響で河岸に乗り上げ、横を向いてしまったらしい。人為ミスの可能性も否定できないという。ちなみにあべのハルカスの建物総重量は約28万㌧、エバー・ギブンの総トン数は約22万㌧だ。陸に上がった船ほどたちの悪いものはない。座礁したのは23日。これまでも事故はあったものの、運河が全面封鎖に至ったのは今回が初めてだそう。海運の要衝だけに世界が受けた衝撃は大きかった。原油を輸入に頼る日本も例外ではない
▼ともあれエバー・ギブンは29日に離礁し、待機していた他の船舶の通航も始まった。大量の土砂を除去し、満潮時に大型タグボートで運河の中央に引き戻したのだとか。超高層ビルほど巨大な物体を動かす前例のない仕事をこんな短期間でやり遂げるとは。復旧スタッフの工夫と技量には驚くほかない。