アイヌ民族の文化を発信する西胆振管内の2施設が1日に供用を開始した。洞爺湖町のアイヌ民族共生拠点施設「ウトゥラノ」と、室蘭市のイタンキ生活館で、地域住民がアイヌ文化に触れ、活動をすることができる。昨年7月に白老町で民族共生象徴空間「ウポポイ」が供用し注目が集まる中、2施設は両自治体が推進するアイヌ関連施策の中心的役割を果たす場となる。
ウトゥラノは、国道37号沿いの洞爺湖町本町1の1に完成。アイヌ語で「共に、一緒に」を意味し、地元小中高生の投票で名称を決定。老朽化した本町生活館建て替えに合わせて整備し、従来の集会所機能に加え、アイヌ文化を発信する機能を備えた。
町内では洞爺湖アイヌ協会員が10世帯のみとなり、文化の伝承が困難となっている状況。このため、施設内には伝統儀式であるカムイノミ・イチャルパを室内で行えるよう炉を備えた研修室を置き、民族衣装のルウンペや儀礼用具、アイヌ民族の社会的地位向上に一生を捧げた白井柳治郎に関する展示スペースも設けた。
規模はW造、平屋、延べ494m²。設計は建築を創建社、外構を応用設計が担当。施工は主体を高清水建設・リフォーム成田共同体、機械をゴウダ・斉藤設備工業共同体、電気を共和電設、外構を重建能登組、展示設置を丹青社が担った。
外観はアイヌの民族衣装に使われる紺と白を壁に、赤を屋根にそれぞれ採用。アイヌ文様とカモメを組み合わせた独自のロゴマークもあしらった。平日午前9時から午後5時まで開館し、町では彫刻教室や厨房を使った料理教室などを予定する。
イタンキ浜近くの室蘭市東町3丁目13の26に位置するイタンキ生活館は、1981年建設で老朽化が進んだため改修。既存施設の配置を生かし集会室や会議室、トイレなどをバリアフリー化したほか、アイヌ民具や衣装の展示スペース、玄関前スロープを新設した。
規模はW造、平屋、延べ227m²。敷地内の駐車場を拡張したため既存施設に比べ減築となった。改修設計は市建築管理課が行い、施工は建築を高橋建設、電気を北光電業、衛生を三栄設備が担った。
1日に現地で開かれたオープニングセレモニーでは、青山剛室蘭市長が「室蘭には地球岬など国指定名勝のピリカノカがあり、大切なアイヌ文化を後世に残す施設となる」とあいさつした。
開館時間は平日午前9時から午後2時30分まで。市では刺しゅう講座などを開く予定だ。(室蘭)
(北海道建設新聞2021年4月2日付19面より)