高知に廣井勇博士の銅像

2021年05月01日 09時00分

 貧しくて就学できない若者たちのための遠友夜学校創立や『武士道』の著書などで知られる新渡戸稲造でも、若いころは人物の評価を間違うことがあったらしい

 ▼新渡戸は傑出した人物の多い札幌農学校の二期生だが、同期の廣井勇をじっくりと観察した上で、「高尚な言葉や大言を好む」と見て「ズル」「ズルッコ」と呼んだという。『ボーイズ・ビー・アンビシャス 米欧留学編』(二宮尊徳の会)に教えられた。日本の土木技術の礎を築いた廣井はもちろんそんな男ではない。金がかかる会合に出ず、粗末な服装で過ごし、友人に守銭奴と言われながら資金を貯め、二期生の中で一番早く米国留学を実現した。一日も早く欧米の進んだ技術を習得したいと熱望していたのだ

 ▼廣井は米国で修行した後、ドイツでも学ぶ。有言実行ならぬ大言実行を知った新渡戸は「彼は気高い奴です」と評価を改め、「ズル」というあだ名も使わなくなったそうだ。実際、生涯懸けて国民に無私の貢献をした人だったのである。高知の建設関係者有志でつくる「廣井勇を顕彰する会」が先月、出生地の佐川町に廣井博士の銅像を建立したのを本紙4月15日付で知った。同じ二期生でも新渡戸や内村鑑三と比べ功績があまり知られていないのを残念に思い、計画を進めていたという

 ▼札幌農学校教授時代の1890年に造った今も現役の小樽港北防波堤をはじめ、国中に博士の仕事が残る。最も大きな成果は教育者としてインフラを支える多くの優れた技術者を育てたことだろう。高知に行った折にはぜひ銅像を訪ねてみたい。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • web企画
  • 川崎建設
  • オノデラ

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,372)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,259)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,212)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,124)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (800)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。