使い古された手法なのに、サスペンスドラマなどでいまだ採用され続ける筋書きがある。またかと思いながらも、見ているとつい引き込まれてしまう。時限爆弾を仕掛けた犯人と警察との頭脳戦である
▼ある所に時限爆弾を隠した、と犯人から挑戦状が届く。爆発は12時間後だ。警察は発見に手を尽くすが一向に見つからない。時間は無情に過ぎてゆく。万策尽き果てたとき、突然のひらめきで現場が判明。急行する。どうなるか大方分かっているとはいえ、残り時間がなくなってくるとハラハラせずにはいられない。切迫した状況が緊張感を生むのだ。これはドラマだからいいが、実際わが身に時限爆弾を抱えて生きるとなればどれだけつらいことか。アスベスト被害の件である
▼数十年に及ぶ例もある潜伏期間の後に肺がんや中皮腫を発症するため〝静かな時限爆弾〟と呼ばれる。建設現場でアスベストを吸い病気になった人らが国と建材メーカーに損害賠償を求めた集団訴訟で17日、最高裁が初判断を示した。「国が対策を怠ったのは違法」と賠償責任を認めたのである。1975年に規制が強化されたのに、2004年まで使用を禁止しなかったのは不合理だと断罪したわけだ。うなずくほかない。爆弾が毎日増えていくのに国は手を尽くさなかった
▼今訴訟の原告は1200人だが、残念なことに今後も確実に患者は増え続ける。判決を受け、国は1人最大1300万円の和解金を支払う方針を固めた。他の被害者にも同水準の給付金を支給するという。時間切れにならぬよう救済を急いでもらいたい。