急な用事で札幌から日高山脈の峠を越え、道東のとある所へ行ってきた。本道に緊急事態宣言が発令される少し前の話である。そこの住宅街に小さな商店があり、表に一枚の紙が張られていた。見るともなしに見ると、こんな内容だ
▼「安心してお買い物をしていただくため、この管内以外の方の入店はお断りしております。ご理解のほどお願い致します」。こういうことがあるのは知っていたが、初めて見て驚いた。だからといって腹が立ったわけではない。新型コロナウイルスが入り込む隙が少しでもあるなら、ふさいでおきたいと思うのが人情だろう。それだけ不安や恐れに駆られているのだ。これだけ感染拡大が続くと、いつどこで自分が当事者になるか分からない
▼ただ、人と人との温かい交流を阻むこの不安や恐れも、コロナと同じかそれ以上に社会を破壊している実態が明らかになってきた。文部科学省によると、昨年1年間の子どもの自殺者は499人に上り、前年に比べ100人も増えたという。過去最多だそうだ。小、中学生、高校生いずれも増加傾向にあるが、中でも高校生女子は60人増と突出。学業や進路の悩み、親との不和、うつ病に苦しむ子どもが多い。コロナを避けるため外の世界と断たれた生活が、逆に子どもたちを追い込んでいるようだ
▼宣言下にある今、人々の心は不安と恐れでますます縮こまっていよう。「〈いっせいに夜明け〉という日はないものかいつも誰かが泣いてるようで」干場しおり。夜明けが訪れるまで、せめて子どもたちへの目配りだけは忘れずにいたい。