今どきはデジタル化されていない職場の方が珍しいのでないか。机の上にパソコンのある風景が当たり前になって久しい。ただ、これだけ長く使っているのに、パソコンの達人はさほど増えていない
▼急に文字入力ができなくなった、ネットワークにつながらない、自動アップデートされた後にいつものソフトが使えなくなった―。毎日のようにトラブルは起こるが、きっと自分では解決できない人がほとんどだろう。詳しい人がいないとお手上げ、壊れても代替機がない、気付くとパソコンのご機嫌伺いで半日つぶしていたりして。いい歳をした大人が多数集まった職場にしてこの体たらくである。デジタル教科書の導入が今後加速される小学校では、一体どんなことになるのやら
▼この春から全国で実証事業が始まったが、学校現場の混乱は決して小さくないらしい。文部科学省にはデジタル教科書端末の不具合や子どもたちの操作能力のばらつき、通信環境の不安定さなど多くの問題が寄せられているそうだ。児童生徒のアカウント管理、使い方説明、トラブル対応は原則、先生に任される。得意な人ばかりではなかろう。授業や関連業務だけでも大変なのに、その上これでは子どもたちとも十分に向き合えまい
▼文科省の有識者会議が27日、本格導入に備え教育効果や通信環境格差、健康面への影響を検証すべきとする第1次報告案をまとめた。大切なのは教育の質を高めることで紙かデジタルかではないと政府にくぎも刺した。職場で動かないパソコンと格闘しながら深くうなずく人もいるに違いない。