細骨材の代わりに利用 半永久的に固定化
會澤高圧コンクリート(本社・苫小牧)は、プラスチック廃棄物をガンマ線で改質し、砂の代わりにコンクリート材料として使う固定化技術について、米国・MiConテクノロジー社と共同開発契約を結んだ。2023年春の実用化を目指す。従来のような燃料ではなく材料として廃プラを再利用するため、CO₂排出量削減が期待でき、脱炭素や環境改善につながる技術として注目されそうだ。
マサチューセッツ工科大(MIT)の基礎研究から生まれたプラスチック改質技術を応用し、廃プラをコンクリート内部に固定化する。MiCon社はMITのスタートアップ企業。持続可能なセメント系材料の開発で権威のオラール・ビューカスターク教授がCTO(最高技術責任者)、材料加工技術の研究者カーヴェ・バクタリイ博士がCEO(最高経営責任者)を務める。
破砕した廃プラにガンマ線を特殊な方法で照射することで、表面を改質し、物理特性を損なうことなく細骨材などの代替としてコンクリート製造に利用する基礎研究で強みを持つ。會澤高圧は19年から技術交流し、アイザワ技術研究所を通じて技術検証や事業化調査を進めた。
検証から、コンクリート1m³当たり約5㌔の廃プラ(500㍉㍑ペットボトル200本分に相当)を細骨材の代わりに使えることが分かった。焼却時に発生する13㌔相当のCO₂を半永久的に固定化することにつながるという。
品質が劣化した破砕プラスチックをコンクリートに添加した場合、コンクリートのフレッシュ性状に悪い影響を与え、硬化後の強度劣化などが懸念される。技術研究所ではMiCon社の改質技術に加え、強度増進が期待できるシリカフュームなどの材料と混合して混和剤のように使用すれば、同等かそれ以上のコンクリート強度を引き出せる潜在力があることを確認した。
今後は、ガンマ線照射と同じ改質効果が得られ、かつ処理スピードが早い電子ビーム照射機を備えたコンテナ型モジュールを開発する。コンテナは寸法が世界規格で、設置や移動がしやすく自由に組み合わせられるのがメリット。廃プラ収集量に合わせてモジュールを増減させたり、稼働率に合わせて使い回すなどの利用を考えている。
日本国内で回収される廃プラは約850万㌧で、うち69%は焼却処理されている。一方、中国は17年に廃プラ輸入禁止を表明し、東南アジアや台湾も規制を導入するなど、日本の廃プラは行き場を失いつつある。
會澤祥弘社長は「住民と回収業者、コンクリート工場が連携した廃プラの材料リサイクルシステムが柔軟に展開できるようになる。強度の増進でセメント使用量を戦略的に減らすことが可能になり、セメント製造時のCO₂削減効果も期待できる」と話している。
(北海道建設新聞2021年7月15日付3面より)