「六価クロム対策といえばトーワ」 国内外での技術定着を目指す
トーワ建設(本社・旭川)は、有害重金属の六価クロムをはじめとする汚染土壌修復で高い技術力を持つ。これまで中国の瀋陽環境科学研究院といった各研究機関や大手環境エンジニアリング会社などと実証試験を重ね、土壌の性質と汚染に至るまでの経緯、コストなどに合わせた修復資材の「カスタマイズ手法」を確立した。コロナ収束後は中国での本格的な処理事業を計画するほか、日本国内での販路開拓を進め、環境保護資材を扱う日本企業の海外展開をサポートしたい考えだ。
2011年に環境事業がメインの企画開発事業部を立ち上げ、汚染土壌の修復に取り組む。道総研・工業試験場の協力を受けながら翌年、植物由来の六価クロム汚染土壌修復資材を開発した。処理方法として一般的な硫酸第一鉄七水和物や鉄粉、ナノ鉄などのように、六価クロムが再溶出する懸念がない。日本と中国で発明特許を取得。資材はいずれも天然素材で、環境負荷が低いのも長所だ。
六価クロムは、液に触ったり粉じんを吸い込むことで、手足や顔などに発疹が起こったり、炎症、肺がんなどが生じる有害物質。主に金属メッキ、皮なめし、顔料などで広く用いられてきたが、人体影響を考慮した使用規制から、近年は代替の製品や処理法の開発が進んでいる。
汚染土壌は、製造過程で六価クロムを扱っていた工場の跡地などで多い。まれにセメント固化材を用いた改良土からも確認されている。
開発した修復資材を用い、17年から中国で実証試験を重ねる。東北部に位置する遼寧省の瀋陽環境科学研究院などと共同で作業し、集めた土壌サンプルを基に研究を進め、効果のある処理方法を開発してきた。
研究から7種類の基本資材を開発した。六価クロムの処理は土壌の性質や汚染経緯、コスト、修復条件など案件によって異なるため、7種類をカスタマイズすることで現場に合った最適な処理方法を導き出すことができる。
工業試験場のインキュベーション施設を拠点に活動し、技術面で中心人物になる浅野孝幸顧問は「六価クロム対策は古くから取り組まれてきたが、今も処理事業が続いているのは、技術がうまくいっていないから。単に物を売るのではなく、原因に合わせた資材をカスタマイズできるのはトーワの強み」と話す。
中国は15年に改正環境保護法、19年に土壌汚染防止法が施行し、土壌修復事業はこれからが本番。コロナ禍では事業が宙に浮いている状況だが、22年には1兆円規模の市場になると成長が期待されている。
同社は、遼寧省と瀋陽市の両環境保護産業協会の日本連絡窓口になっていて、六価クロム対策だけでなく、日本の優れた環境技術や設備などを中国6万社の企業に紹介する仲人役を担う。これまで培ったノウハウから商談支援したり、技術提携のロイヤルティー管理で強みを持つ。
室山雅彰副社長は「国や場所を問わず相談に応じる気持ちで事業に臨んでいる。六価クロム対策といえばトーワを連想してもらえるよう国内外で技術を定着させ、同時に私たちのような日本企業の海外進出も支援したい」と話している。
(北海道建設新聞2021年8月18日付3面より)