45歳定年制

2021年09月16日 09時00分

 普段はぼんやりと生きている人間が追い込まれることでやっと本気を出す。そんな展開が物語にはよくある。カンフー映画界のスター、ジャッキー・チェンの初期の作品などはその典型だろう

 ▼1979年日本公開の『スネーキーモンキー 蛇拳』をご記憶の人も多いのでないか。拳法道場で下働きをさせられているジャッキーが、他流派から一門つぶしの攻撃を受けることで自分の真の実力に目覚めていく話だった。英米には「臆病者を奮起させると悪魔とだって戦える」、日本にも「窮鼠猫を噛む」のことわざがある。洋の東西を問わず、崖っぷちに立たされると人間は眠っていた実力を出せるとの期待があるようだ。ただ、それは幻想に近い。ほとんどの人間は追い込まれるとつぶれてしまうのが現実である

 ▼新浪剛史サントリーホールディングス社長が提言した「45歳定年制」が波紋を広げている。定年を45歳に早めれば、危機感を抱いた社員が若いころからもっと頑張るようになるとの思惑があるらしい。発言は経済同友会が9日に開いた夏季セミナーで飛び出した。46歳からは自らの才覚で生きなさいというわけだ。社員の奮起を促すと言えば聞こえはいいが、体のいい脅しにほかならない

 ▼新浪社長のようないわゆる「プロ経営者」は大胆にリストラをして見かけ上の利益を出し、功ありと評価される例が多い。確かにそれで株価は上がるものの、社会的信用まで得られるのかどうか。新浪氏は翌日釈明したが社員を物や数字で見ている点は変わらない。「窮鼠」だって時には別のものをかむかも。


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