「eスポーツ」でビジネス展開 札幌中心に広がりも

2021年09月27日 10時00分

市場規模70億円 多様な取り組み

ICTパーク(旭川市)はeスポーツ環境を整備

 対戦型コンピューターゲームで勝敗を競う「eスポーツ」は市場規模が約70億円といわれる。今後の上昇予測を踏まえ、ビジネスに取り入れる動きは札幌を中心に道内でも広がっている。ホテルや放課後デイサービスでの活用、異業種からのプロチーム参入、イベントや大会の運営など取り組みは多様だ。

 不動産業などを手掛ける恒志堂(本社・札幌)は3月、ホテル「VILLA KOSHIDO ODORI」を札幌市内にオープンし、2階をeスポーツ専用フロアとした。高性能パソコン(PC)やレーシングゲーム専用コックピットを置き、最大6人の宿泊が可能だ。合宿やイベントでの利用を想定する。eスポーツ導入によるサービスの高付加価値化を図った形だ。

 発達障害を持つ児童らが通う放課後等デイサービス「esp123」もeスポーツを取り入れる。UPLE123(本社・札幌)が4月に札幌市内で開いた同施設では、勉強やパソコンスキル学習を済ませた児童たちがオンラインゲームなどに取り組んでいる。

esp123(札幌市)でゲームを楽しむ児童やスタッフら

 管理責任者の仲川明さんは「チームで取り組むゲームで子ども同士やスタッフとのコミュニケーションが自然と活発になる。話すのが苦手な子も自信を付けて成長していると感じる」と手応えを話す。自宅にこもりがちな子どもが外に出るきっかけを作りたいと通わせる保護者もいるという。

 プロチームを作る動きも広がりを見せる。プロバスケットボールチームを運営するレバンガ北海道(本社・札幌)は数年前からプロチームを擁し大会などに参加する。スポーツ界以外からも参戦が続き、19年秋には足場施工を手掛ける札幌ビケ足場(同)、今春には通信キャリア店舗にスタッフを派遣するギガネット(同)がプロチームの運営を始めた。両社ともに期限付きの社員として選手を雇用して月給を支払っている。

 選手らは道内外に散らばり「テレワーク」で練習や大会・イベント参加をこなす。コーチやアナリストの人材も確保し、国内外の大会優勝やスポンサー獲得を目指す。

 札幌ビケ足場のチームは「最初の1年半は持ち出しの状態が続いた」(大輪和広社長)というが、大会での実績が評価され、今年はNTTドコモ主催のプロリーグに招待された。選手1人当たり年間350万円以上の給与がドコモに保証されるという。大輪社長は「大会や情報発信を重ねて知名度を高めたい」と意気込む。

 ギガネットも他社からの転職組や都内から札幌へ越して来たアナリストがいるチームを擁する。事業責任者の水上敦司部長は、これからスポンサー獲得なども本格的に目指しつつ「2―3年をめどに事業として成り立たせたい」と話す。

 イベントや大会を裏方から支えるビジネスや施設も定着が進む。18年設立のunifide(札幌)は、道内初のeスポーツ施設をすすきのエリアで運営し、イベント企画やプロ選手のサポートをする。

 また、旭川市やNTT東日本などは2月、eスポーツ拠点として整備したローカル5G施設「ICTパーク」をオープンした。オンライン交流会やeスポーツ講座の舞台としてeスポーツシーンを盛り上げる。自治体の動きとしては札幌市も北海道eスポーツ協会と関連ビジネスのセミナーを開いている。

 市場拡大が見込まれる中、ビジネスに取り入れるには既存事業の高付加価値化につなげる選択肢も有力だ。業界や顧客の特長を見極めることで新たな商機につながりそうだ。

(北海道建設新聞2021年9月24日付3面より)


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