小説家で脚本家の平岩弓枝さんは運転免許を持っていないが、車には愛着があるという。運転するのは専らご亭主である。ここ30年ほどは大きさや安全性が気に入り、トヨタ自動車のランドクルーザーに乗っていたそうだ
▼娘夫婦と孫の4人も「スープの冷めない範囲に住んで互いに助け合って生活している。家族の団欒にもランクルは大きな役割を果たしてきた」のだとか。エッセー「マイカー三昧」に記していた。そしてこう続ける。「六十年間、私たち家族と生活や喜怒哀楽を共にした車たちは、単なる機械とか乗物というよりはもっと身近かな私たちの体の一部としか思えない」。共感する人もたくさんいるのでないか。日本人と車との関係は深い
▼それだけに、この事態に困惑している人は多かろう。ガソリンの価格が高騰しているのである。資源エネルギー庁が6日発表した全国のレギュラーガソリン平均価格(4日時点)は1㍑当たり160円。当方も先日給油に行き、あまりの高さにびっくりした。160円台になるのは2018年10月以来、3年ぶりだという。しかも本道はこれから冬で灯油の需要期に入る。道経済産業局の調べでは、4日時点の全道平均が99・8円。前年の同じ時期より20円ほど高い。懐も寒い冬になりそうだ
▼海外の経済活動再開で原油が品薄になったのが原因らしい。コロナが下火になり、そろそろ家族や仲間とお出掛けにというところでこの仕打ちである。一般の人だけでなく物流や産業の関係者にとっても頭の痛い問題だろう。しばらくは車三昧とはいかなそうだ。