ビジネスの世界でよく語られる例え話に、「ゆでガエルの法則」がある。誰もが一度は耳にしたことがあろう。カエルを熱湯に入れるとびっくりして飛び出すが、快適な温度の水に入れてゆっくり熱すると、気付かぬうちにゆで上がって死んでしまうというのである
▼環境の変化に無自覚でいることの危険性を伝える教えだ。顧客の意識が変わっているのに、商品やサービスは古いまま安穏としている場合などに使う。この「ゆでガエルの法則」、適用範囲はビジネスの世界に限らない。日本を取り巻く最近の軍事環境を語る上でも役に立ちそうだ。緊張も高まり方が徐々にだと、国民の危機感も薄れがちである。実はかなり危ない状況だろう
▼このところ北朝鮮の弾道ミサイル発射が相次いでいる。19日は潜水艦から発射したらしい。その前は線路上で列車からだった。攻撃能力の進歩と多様化を誇示したかったに違いない。いずれも日本海に落下したが、日本の喉元にナイフを突きつけられているようなものだ。北朝鮮だけではない。同じ日に中国海警局の公船4隻が尖閣諸島沖で領海に侵入。18日には中国軍とロシア軍の艦艇10隻が初めて、艦隊を組むような形で同時に津軽海峡を通過した。4日には中国軍の戦闘機56機が台湾の防空識別圏に入り示威活動を展開している
▼短期間にこれだけきな臭い事態が続いているのに国民の関心は総じて低い。目前に迫った衆院選に気を取られているのか、それとも状況の悪化がじわじわと進んでいるせいで反応が鈍くなっているのか。水は既にやけどするほど熱い。