マルシェ開催、文化財で「バー」 平岸ハイヤーの取り組み

2021年10月25日 15時00分

「人のにぎわいがあってこそのタクシー会社」

 地域密着を掲げるタクシー会社の平岸ハイヤー(本社・札幌)は、マルシェ開催や国の登録有形文化財を活用したバー運営など地域活性化に向けた試みを進めている。人口減少に伴う需要縮小も見据え、地域とのつながりを多様な事業で強める考えだ。

 同社は1958年、神代(くましろ)晃嗣社長の祖父が平岸での公共交通機関の必要性を踏まえ、タクシー2台で創業。当時から現在まで会社の所在地は変わらず、豊平区平岸の住宅街だ。18年に就任した神代社長のもとで現在は車両70台、ドライバー170人を擁する。

 6月に雑貨や食料品、飲食物の屋台が並ぶ「平岸マルシェ」を会社の敷地内で始めた。月2回の頻度で開催を続けていて、毎回1000人程度が訪れる。

「平岸マルシェ」を月に2回開いている

 10月からは、数年前に買い取った国の登録有形文化財「柳田家住宅旧りんご蔵」でバーを開店。大正期に建てられたれんが造りの趣を生かして内装を整え、飲食業経験のあるドライバー数人がバーテンダーを務める。蔵は飲食提供やイベントの貸し切り利用にも提供していて、地元醸造所のビアガーデンや期間限定のフレンチレストランに活用されたこともある。

 「平岸を最強の住宅街に!」というビジョンを掲げ、タクシー事業とは全く異なるビジネスを展開。事業を多角化して会社を大きくする意図はなく、「人のにぎわいがあってこそのタクシー会社。地域活性化を通じて出会いや移動のプラットフォームになりたい」と神代社長は強調する。マルシェの出店者同士が市内で飲食店を開いた例もあるという。

神代社長と同社シンボルの白いだるま

 地域活性化事業の背景にはコロナ禍の影響もある。20年度の売り上げは前年度比25%減で特に夜間の減少が大きく、人が動かないとタクシー会社はお手上げになることを痛感。昨夏にはドライバーに感染者が出て、3日間と短期だったが休業を余儀なくされた。

 現在はりんご蔵でのキッチン新設を計画し、食品開発やデリバリー事業を視野に入れる。買い物代行サービスを実施しているため、飲食店と食品を手掛けて生活の幅広いニーズを捉える狙いだ。まちづくりに取り組むタクシー会社の新しい形を探る。

(北海道建設新聞2021年10月22日付3面より)


関連キーワード: さっぽろ圏 交通 地域振興

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • オノデラ
  • 東宏
  • 日本仮設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,386)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,292)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,282)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,078)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (991)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。