今でも使っている人がいたら申し訳ない。昭和の時代には能力の高い同僚と自分とを比べて、「しょせんあの人と私とじゃラベルが違いますから」と、しゃれ交じりに謙遜する〝おやじギャグ〟があった。もちろんレベルをラベルに言い換えただけの〝寒い〟ジョークである
▼レベルつながりでいえば、いつからか「レベチ」という若者言葉を聞く機会が増えた。「あの店のチーズケーキはレベチ」のように使われる。お察しの通り「レベルが違う」の略で、対象が比べものにならないほど優れているさまを示す表現だ。英語のレベルが日本語同然になって久しい。今やあえて訳す必要もないくらいである
▼新型コロナウイルスと一定の距離を保ちながら暮らすウィズコロナの時代を見据え、対策もそんな親しみのある用語に変えてみたのだろうか。政府の感染症対策分科会がおととい、緊急事態宣言などを発令する目安となる新指標を策定。これまでステージで4分類していた指標を、レベルで5段階に見直した。判断基準の重点を従来の新規感染者数から医療の逼迫(ひっぱく)度合いに移したそうだ。ワクチン接種の進展や治療薬の開発で状況が大きく変化しているためである。臨機応変ということだろう
▼それではと新指標の表を眺めてみたのだが、正直言って素人には前のステージとどこがどう違うのかピンとこない。どうやらわれわれに親しみのあるレベルではないようだ。ウィズコロナの時代には多くの人のふに落ちる目安が望ましいと思うのだが。レベチな方たちには分からないのかもしれない。