それほど遠くない所への移動には車や公共交通機関でなく、自転車を使う人がここ何年かでずいぶん増えた。理由は大きく分けて二つあるようだ
▼一つは世界的な環境意識の高まりである。英国で13日まで開かれていた国連の気候変動に関する国際会議「COP26」の主要議題がCO₂の削減だった。自転車はすぐ始められる取り組みというわけだ。もう一つはコロナ禍である。3密回避にこれほど有効なものはない。au損害保険が昨年発表した東京都の自転車通勤者調査を見ると、4人に1人が新型コロナ流行後に自転車通勤を開始していた。現在はもっと多くなっているのでないか。余計なCO₂を出すことがなく、ウイルスとの接触を避けられ、運動不足の解消にもなる。いいことずくめだが落とし穴もあった
▼交通事故の多発である。軽微なものならまだしも、命に関わる事故も全国で相次ぐ。12日にも大阪府枚方市で中学3年の男子生徒が前から歩いてきた70歳の男性をはね、死亡させる事故があった。報道によると生徒は下り坂の歩道をスピードの出やすいクロスバイクで走っていたそうだ。午後5時55分ごろというから既にかなり暗かったろう。男性に気付かぬまま激しくぶつかったに違いない
▼生徒がそうだったかどうかはまだ分からないが、普段街を歩いていても、スマホのながら運転、すり抜け、暴走、無灯火といった傍若無人な自転車をよく目にする。怖い思いをした人も少なくないはず。CO₂のように自転車も減らせと言われる前に、利用者は法令とマナーの順守に努めた方がいい。