幼いころから米国に暮らすコンピューター・サイエンティストでミシガン大教授の外山健太郎氏はあるとき、日本には特殊な才能があると気付いたそうだ。それは「すべての活動を『型』に体系化する」ことだという。エッセーに記していた
▼駅員の秩序立った動きや店員の元気な「ありがとう」のあいさつ、レストランの行き届いた清掃―。何から何まで丁寧で、〝米国人〟の目から見ると気持ちが良かったらしい。外山氏はこう指摘している。「決して並の出来事ではない。世界全体から見ると、日本社会の奇抜な点である。というよりも、著しい文明の偉業だと思う」。今季の類まれな成績に加え、日本のそんな「型」も評価された結果でないか
▼米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手がアメリカンリーグの最優秀選手(MVP)に選ばれた。日本人としては2001年のイチローさん(マリナーズ)以来2人目。全米野球記者協会所属記者30人によって決められるが、全員が1位に投票という快挙だった。投手として9勝、156奪三振、打者としてホームラン46本、100打点。盗塁も26回成功させた。「二刀流」の「ショータイム」には全米のファンも大いに湧いたと聞く
▼注目されたのはそれだけではない。謙虚でおごらず、フィールドにごみが落ちていれば自ら拾い、人に礼儀正しく朗らかに接する態度もである。大谷選手の人柄が素晴らしいのは言わずもがな。ただ、日本人として自然な振る舞いと思える部分も随所にあった。二つの偉業が認められたとすれば、これほどうれしい話はない。