歴史・文化伝える遺産に
旭川市教育委員会は旧宮北邸の保存を検討している。木骨石造の2階建て、延べ200m²の建物で、西洋風のデザインや美瑛軟石の活用など歴史・文化的価値が高い。築100年以上が経過して屋根や内部の劣化が著しいことから、改修して利活用することを視野に入れている。

開拓時代の趣を残す旧宮北邸
同邸は9条10丁目にある石造の西洋風建築。永山に入植し、木材販売などさまざまな事業を手掛けた宮北秀吉氏が1915年ごろに私邸兼事務所として建設した。
外観は石造だが、柱や梁といった構造は木造という木骨石造方式で建設。開拓時代の倉庫建築に多く用いられた方式だ。
途中で勾配が急になるマンサード屋根で、半円状の切妻、アーチ型の窓、付け柱など随所に西洋風のデザインが取り入れられている。外装の石材は建材として全道に出荷されていた美瑛産の軟石。上川地方の産業の歴史を残す遺構にもなっている。
法務省が土地を含めて所有。市教委が埋蔵文化財の資料や発掘資機材などを置く倉庫として80年から賃貸していた。市民団体の保存要望などを受け、2020年12月に取得した。
内部は雨漏りで壁や天井が傷んでいるほか、電気や上下水道などの設備がない。内部公開も視野に入れて利活用方法を固め、必要な修繕を施す考えだ。市教委の担当者は「大正時代の貴重な建物。残す方法を検討したい」と話す。
旧宮北邸をめぐっては、「旭川の歴史的建物の保存を考える会」が3Dモデルの製作やパンフレットづくりなど、魅力や価値の発信を通して文化財としての保護を求めている。軽部望会長は「旧宮北邸は、会が発足するきっかけとなった建物の一つ。市の誇る文化、歴史的遺産として守ってもらいたい」と期待している。
(北海道建設新聞2021年11月22日付8面より)