真冬に人里離れた所で車が立ち往生したらどうしよう―。そう考えたことのある人も多いのでないか。雪に閉じ込められ死亡した例も現実にある。本道や東北では切実な問題だろう。雪国で電気自動車(EV)が不安視されるのはそんな事情もあるに違いない
▼日本自動車連盟(JAF)の会報誌『ジャフメイト』12月号に興味深い記事を見つけた。EVが雪で長時間立ち往生したときの過ごし方を調べたものである。マイナス7度前後の屋外、電力残量70%でテストを実施。エアコンを25度でつけ続けると残量は5時間で38%まで落ちたそうだ。電気毛布のみで暖をとる方法だと66%に抑えられたが、なんとか寒さに耐えられる程度だったらしい。排気ガス中毒の心配はないものの、廃熱を利用するエンジン車に比べ暖房能力は低い
▼冬になったからといって、車に毛布や防寒着を積み込んでおく人は少なかろう。エンジン車はいわばストーブを積んで走っているようなもの。積雪寒冷地ではやはり安心感が違う。今回の国連気候変動枠組条約締約国会議「COP26」では2040年までに全ての新車販売をEVなどにする目標も示されたが、日本は参加を見送った。ほっとしたというのが正直なところである。米国やドイツも同じ対応だった
▼自動車を主要産業に据える国ほど、短兵急な全面EV化の痛手は大きい。昨今の動きはそれを武器にした経済戦争の趣さえある。CO₂削減をてこに国連を巻き込み、一国の産業や技術、雇用をつぶそうとするのはいただけない。雪国の住民にとっては命にも関わる。