先の大相撲九州場所で全勝優勝を果たした横綱照ノ富士の取組は見事のひと言だった。15日間のうち、一瞬でもヒヤッとするような場面があったのは2、3日でないか。それとて負けを予感させるほど追い詰められる展開ではなかった
▼大相撲界を長年引っ張ってきた名横綱白鵬が引退した後の一人横綱である。重責を一身に受ける立場だが、悲壮感などはみじんも感じさせなかった。かなり精進を重ねたに違いない。照ノ富士と同じくらいの強さと品格を備えるとは言い難いものの、衆院選で絶対安定多数を得た与党自公政権も政治の世界では横綱ということになろう。その伝でいくと野党第1党の立憲民主党は大関である。横綱に一歩も引かぬ覚悟と名勝負を生む技が求められよう
▼さて、この衣替えでこれからの取組にも変化が見られるだろうか。11月30日に行われた立憲民主党の代表戦で、泉健太氏が新代表に選ばれた。泉氏は党前政調会長。決選投票で逢坂誠二元首相補佐官を破り代表の座を勝ち取った。やはり相撲に例えると立憲民主の国会対応は、猫だましで意表を突いたり、初切(しょっきり)で披露される砂かけのような嫌がらせをしたりと少々意地の悪さが目立つ。横綱を意識しすぎ、がっぷり四つの政策論争に二の足を踏んでいるようにも見える
▼有権者の多くが下す〝批判だけの政党〟の評価もそんなところに起因していよう。泉氏は批判政党の印象を払拭し、政策発信を強めるとの考えを表明している。衆院選明けの初場所となる臨時国会は6日に召集される。堂々たる戦いを見たい。