わが家にはまだないのだが、最近ちまたではお掃除ロボットなるものがずいぶんと幅を利かせているらしい。聞くと人間がいちいち指図せずとも、LPレコード大の円柱形の機械が部屋を縦横に走り回り、勝手にきれいにしてくれるのだとか。何とも便利な話である。米アイロボット社の製品「ルンバ」が流行の火付け役という
▼とはいえ脚立に上ってランプシェードに積もったほこりを取る仕事まではしてくれまい。台所のレンジフードにこびりついた油汚れを落としてくれることもなさそうだ。SF作家星新一さんのショートショートならロボットが全てやってくれそうだが、現実はそう甘くない。多くの家庭ではことしも身長のあるお父さんが高い所の作業を任されるのだろう。そろそろ年末の大掃除を考える時期である
▼自分に気合いを入れるのはいいとして、同時に用心もした方がよさそうだ。毎年12月には大掃除に絡んだ事故が多発するのである。消費者庁も8日、データを公表して注意を促していた。それによると2015年から19年までに掃除中の事故で緊急搬送された人(東京消防庁管内)は、1―11月が各月300人前後なのに、12月は643人に上ったそうだ。高齢者について調べたものだが、どの世代も油断は禁物である
▼現場で働く方々には常識だが、低い脚立でも転倒すれば大けがをしかねない。大掃除は無理な姿勢で慣れない作業をしがちなためなおさらリスクが高まる。妻にあれこれ指図されて初めて動くロボットではあっても、こちらは生身の体。壊さぬよう慎重に使いたい。