ことしも秋頃まではどうなることかと大いに気をもんだが、新型コロナウイルスの感染拡大は9月を過ぎると一気に収束した。今のところ急激な再拡大は見られない。実に幸いである。とはいえ、目隠しをされてジェットコースターに乗っているような一年ではあった
▼干支(えと)の話をするとことしは「辛丑(かのとうし)」で、エネルギーはあるものの、殻を破ろうとすると激しい痛みを伴う年を示唆していた。殻は破れたのかどうか。いずれにせよ激しい痛みを伴ったことだけは間違いない。さて、来年はどんな年になるのだろう。恒例により干支が物語るところを紹介したい。2022年は「壬寅(みずのえとら)」である
▼「壬」は糸巻きの軸や人の懐妊をかたどった字で、腹が膨れゆくさまを表す。植物に例えると次の命の始まりである。一方、「寅」の字の由来は動物でなく、矢を作るため両手で竹の曲がりを真っ直ぐに伸ばしている形。準備を整え新たな状況の出現を待つばかりといったところ。大事なのはこの二つの字の組み合わせだ。「壬寅」は「壬」が五行思想でいう水、「寅」が木で〝相生〟となり、お互いの性質を強め合う関係となる。水が木を育て、木が水を保ち浄化するがごとき好循環をつくり出す。同じ〝相生〟でも負の性質を強め合ったことしの「辛丑」とは対照的である
▼コロナ禍からの全面回復はまだ少し先になるかもしれないが、手を止めず着実に準備を整えれば、次の発展につながる新たな命が育つということか。長かったトンネルの先にもやっと光が見えてきた。