会社が新たな目標を掲げ大きな成長を目指そうというとき、名前を変えることがよくある
▼例えば真空管電圧計を製造販売していた東京通信工業は、トランジスタラジオなど安価で高性能な家電を武器に海外進出を図ろうとソニーに社名変更。警備サービスの草分け、日本警備保障は業務を総合セキュリティーに広げ、セコムに改称した。分野を狭く限定していた名を廃し、発展性を印象付けるものにしたわけである。ただそれで成功すればいいが、失敗するとどんな批判を浴びるか分からない。「英語やカタカナなら世界に通用すると思うな」「何をする会社か見えず怪しく感じる」といった具合である。実はソニーもセコムも聞いただけでは意味不明なのだが、やはり勝てば官軍だ
▼さて、こちらの市場再編に伴う名称変更は吉と出るか凶と出るか。東京証券取引所がこの4月から、これまでの東証1、2部、ジャスダック、マザーズの4市場をプライム、スタンダード、グロースの3市場に移行させるという。最上位のプライムに国際的企業を集め、高い価値を武器に広く海外の投資家を呼び込む狙いである。ところが上場基準は高くしたものの、それに満たない企業も特例の経過措置を利用し、大半の1部企業がプライムに移行。結局は代わり映えのしない顔ぶれになるのだとか。開始前から看板倒れとの話もある
▼ソニーが名前を変えた後も真空管電圧計を作り続けていては、飛躍もできなかったろう。株式市場も主役は上場している個別の企業である。変化を迫られているのはその中身の方でないか。