電化製品需要が急増、供給ひっ迫
道内の電気設備工事で半導体を基盤とする工業製品の納期が見通せないため、工期を遅らせるケースが出始めている。エレベーターの更新や防災無線整備が完了できず、半年以上延長する事態が発生。コロナ禍ながら経済再生に伴う電化製品の需要急増に生産が追い付かず、世界的に供給が逼迫(ひっぱく)し、コンテナ不足など多くの要因が重なり不足している状況だ。木材など資材単価の変動も読めないことから、自治体など発注機関は今後発注する工事への影響を懸念している。
名寄市は4月に着工する、なよろ温泉サンピラー温浴施設改修で当初10月17日としていた完成日を2023年5月31日に先送りする。現行の建築基準法に合わせて、地震発生時は最寄り階に止まり利用者の閉じ込めを防止できるようエレベーター1基を更新するが、制御盤に使われる半導体不足のため工期延長を決めた。
えりも町は3月末で完了予定だった防災無線整備が、受信機に使う半導体の納期が未定のため工期を約9カ月延ばし年度を越す事態に。問題となったのは柱設置型無線機の電波受信部分で、納入されても無線機の製造に3カ月ほどかかることから大幅に変更した。
士別市は、3月に士別下水処理場と朝日浄化センターの電気設備更新を完了する予定だったが8カ月以上延長する。旭川市水道局は石狩川浄水場計装機器更新で水質計電源装置に用いる半導体の納入見込みが立たず、完了時期がずれ込む可能性が出てきた。
半導体以外の部品でも納期の遅れが出ている。札幌市交通局は東南アジアで生産しているノーヒューズブレーカーの部品入荷が遅れているため、北34条駅照明電灯盤改修や東豊線大通駅転てつ器制御盤更新の工期を延ばす見通し。延長に伴い事業費を増額する考えだ。
札幌市内の電気工事会社社長は、高圧受変電設備の計測器は通常1週間ほどの納期が8カ月に延び、照明器具の一部で納期に対する回答も来ないほどで見通しが立たない状態だという。
納品の遅れは、世界的な需要急増で海外での生産が追い付かないほか、コンテナ不足などさまざまな要因が想定されるが、「原因もよく分からず、引き渡しができないことで支払い面での影響が出ないか不安が残る」と話す。
直接影響を受けなかった自治体も警戒感を募らせる。留萌市は昨年6月、道の駅「るもい」屋内交流・遊戯施設建設に着工。「施設内に設置するエアコンや熱交換器、ボイラなどは入札後すぐに発注し、タイミング良くストックできたので半導体不足による影響はなかった。ただ、一歩遅れればどうなっていたか分からない」と振り返る。
しかし、ウッドショックなど資材単価の変動も相まって先行きが見通せない状況から、今後発注する工事については「状況次第では工期を長めに設定するなどの対策が必要になるだろう」とみている。
札幌市内の賃貸マンションを手掛けるデベロッパーは「今は工程を変えなければならないほどの影響はないが、これからのことを考えると、予定通りの完成を目指すなら企画・設計段階から早めの着手を心掛ける必要がある」と気を引き締めている。