5月にサテライトオフィス開設
大雪山の自然を生かしたまちづくりで、移住者の増加が注目される東川町。世界的建築家の隈研吾氏との協力で市街地整備を進めている。5月にはサテライトオフィス「KAGUの家」が開設。デザインミュージアムの新設も計画する。市街地にビジネス環境や健康増進施設、文化拠点を設け、街中を歩いて回る仕組みを狙う松岡市郎町長に話を聞いた。(旭川支社・中村 謙太記者)
―KAGUの家の開設が間近に迫っている。
KAGUの家は5月にオープンする予定で、セレモニーも開催する。新築した4棟に入る企業も決まり始めてきて、うち1棟には隈氏の建築事務所が入居する。旭川空港から10分でアクセスでき、北海道らしい環境でテレワークができると好評だ。
―隈氏と連携することになったきっかけは。
2020年の秋ごろに、隈氏から北海道に事務所を構えたいと相談があり、町のまちづくりにも協力したいと打診があった。町からデザインミュージアムへの協力を提案し、連携プロジェクトが始まった。KAGUの家や共生プラザの監修も担当してもらい、景観に沿った建物が設計できた。
―22年度は共生プラザやキトウシ保養施設の新築など、大型事業が控える。
普通建設事業費はここ数年では突出している。財源に決して余裕があるわけではないが、交付金なども活用して整備を進めていく。
背景には持続可能なまちづくりへの考えがある。町のにぎわいを確保するには、利便性が高く、快適な空間がなければならない。
中心部を徒歩で回れる「ウォーカブル」な町並みを創ることが狙いだ。KAGUの家で働く人が歩いて共生プラザへ行き体を動かす。近くには図書館もあり、生活の質を高める施設を市街地に集めることで人との交流も生まれ、新たな価値が生まれる好循環ができるはずだ。
―デザインミュージアムの整備について。
デザインミュージアムには隈氏の建築デザインや椅子研究家の織田憲嗣氏のコレクションを飾りたいと考えている。実現すれば徒歩圏内で文化に触れられる新たな拠点が誕生し、市街地の魅力向上にもつながる。
東町2丁目の旧農協倉庫群を活用したいが、改修には最低でも20億円はかかると思う。ふるさと納税や交付金を活用して資金を集め、25年度ごろには実現したい。
―ハード整備に力を入れている印象だが、ソフトの充実についてはどうか。
ソフトがあってのハードだと認識している。町では昨年から隈氏と共に家具のデザインコンペを開催している。次代の芸術家を発見し、新しい価値を創造するためだ。優秀作品はデザインミュージアムへの展示も検討している。
これからは世界に対しても魅力を発信しなければならない。東川町は家具の生産が盛んで自然も豊か。新たな拠点があれば、観光客などを通じて町の文化を広く発信できる。ソフトとハードは分けて考えるべきではない。
―まちづくりに当たって特に心掛けていることは。
写真の町を宣言していることから、景観の維持には気を遣っている。被写体として納めたくなる景色を目標に住宅にも景観への配慮をお願いしている。
共生プラザでは大雪山を一望できるスペースがある。大雪山が見え自然を身近に感じられることが町の重要な価値だからだ。
今後は電柱の地中化やベンチの配置なども考える。景観のためにできることはまだある。