証券業界の革命児と呼ばれた松井証券4代目社長で現顧問の松井道夫氏はある時、正しい決断と間違えた決断にはそれぞれ共通項があると気付いたそうだ。正しい決断は捨てる決断、間違えた決断は加える決断だったという。『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社)に教えられた
▼捨てる決断は今までの努力や苦労をいったん白紙に戻し、未来に賭ける選択のため反対する人が多い。一方、加える決断はこれまでのやり方を続けていればよく、頭を使う必要もないため皆納得する。ところが後で調べてみると、加える決断の結果はたいてい芳しくない。従来のやり方を捨て、未来に賭けた方が成長につながっていたのである
▼ビジネスだけでなく、スポーツにも通用する話なのかもしれない。プロ野球・ロッテの佐々木朗希投手(20)が10日の対オリックス戦で完全試合を成し遂げた。1994年の巨人・槙原寛己投手以来28年ぶりの快挙で、史上最年少記録を塗り替えたという。佐々木投手といえば2019年夏の高校野球を思い出す。岩手県立大船渡高のエースとして好投を続け決勝まで進んだものの、監督の「故障を防ぐため」との判断でその決勝のマウンドには立てなかった。結果は準優勝。当時は相当悔しい思いをしたと聞く
▼それが今や完全試合に64年ぶりの13者連続三振の日本記録更新である。甲子園には体に無理を強いるのが美学の風潮があり、けがで野球人生を棒に振る選手も多い。佐々木投手の今回の偉業は、あの時の捨てる決断が連れてきた未来だろう。