テレビアニメ『クレヨンしんちゃん』(原作・臼井儀人、テレビ朝日系)の放送が始まったのは、1992年の4月13日だった。ちょうど30年前のきょうである
▼例えば10歳から番組を見始めたとして、もう40歳の大人になっている年数だ。あのころはしんちゃんに肩入れしていた子どもも、今や親となって父ちゃんのひろしや母ちゃんのみさえに感情移入しているのでないか。幾つになっても楽しめるアニメである。しんちゃんといえばお尻を丸出しにして走り回ったり、子どもらしからぬ毒舌を吐いたり。お堅い人物からすると下品でわがままともいえる言動が目立つが、どこか憎めない。自分に正直なところや、建前ばかりで息苦しい世の中に風穴を開けてくれるところに胸のすく思いがするのかも
▼そんな好き勝手な振る舞いを子どもがまねしては大変と、PTAの全国組織が一貫して「子どもに見せたくないアニメ」に認定してきたのもむべなるかな。まあ、放送開始から30年と聞けば勝敗は明らかだが。アニメを見ていてもう一つ気付くのは、家族や仲間など登場人物たちの距離が心身共にかなり近いことである。仲良く遊び、一緒に問題を解決し、正面からぶつかり合ってけんかもする
▼そんな密接な交流は人の成長に欠かせないが、現実社会ではここ2年ほどコロナ禍で影を潜めている。今やアニメで見るだけだ。最近は第7波の兆しありとされ、またぞろ行動制限がささやかれはじめている。子どもから成長の糧を奪い続けて顧みない大人に、しんちゃんならどんなきついひと言を放つだろう。